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東京地方裁判所 昭和27年(ワ)4986号 判決

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告等は原告に対し東京都大田区新井宿七丁目九十一番地所在の木造トタン葺平家建作業所兼居宅一棟建坪十二坪(実測十五坪)及びその敷地百坪の明渡をなし、かつ昭和二十七年二月十九日より明渡済に至るまで一ケ月につき金千三百四十九円の割合による金員の支払をなせ。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、(一) 被告徳平は(イ)訴外明坂ケイと連帯して、原告より昭和二十五年四月二十六日、金十五万円を弁済期同年六月末の約で、(ロ)被告智徳及び明坂と連帯して原告から昭和二十六年十一月一日、金二十二万七千三百六十円を弁済期間同年同月三十日として借り受けた外五回にわたり金員を借用し、合計金九十三万七千三百六十円の債務を負担していた。

(二) 被告徳平は被告智徳の代理人として、昭和二十六年十一月十九日請求の趣旨記載の被告智徳所有の本件建物を代金六万円、土地を代金十万円で、原告に売り渡し、その代金債務と前記(イ)の貸金債権全額及び(ロ)の貸金中内金一万円とその対当額につき相殺した。

而して、同日被告等は原告に対し原告の請求次第本件建物及び土地の明渡をなす旨を約した。

そこで原告は被告等に対し、昭和二十七年二月八日到達の書面で同月十八日限り本件建物及び土地の明渡を求める旨を通告したが、被告等は依然として本件建物及び土地を占有し、右明渡義務の履行遅滞により原告をして相当賃料たる一ケ月千三百四十九円の割合の損害を蒙らせている。

よつて、原告は被告等に対し、右土地及び建物の明渡及び明渡をなすべき日の翌日たる同月十九日より明渡済に至るまで、本件建物については一ケ月金千六十円八十銭の、本件土地については一ケ月金二百八十八円二十銭の割合による損害金を求めるため本訴に及んだと述べた。

(立証省略)

被告等訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、原告主張の請求原因事実は否認する。被告寺田徳平は原告に対し金四十九万円の債務を負うている事実はあるが、被告等が原告からその主張の(ロ)の金二十二万七千三百六十円を借り入れた事実はない。原告主張の(イ)の債務は既に支払済である。被告徳平は原告に対する債務を弁済するため訴外逆井啓充から金七十万円を借り入れる目的で、昭和二十六年十一月十八日原告方で本件建物及び土地の各売渡証及び被告智徳名義の白紙委任状に同被告の署名をなし、白紙に自己の署名をした。そして同月十九日被告徳平は逆井に対し金七十万円の借用方申し入れたが、不調に終つたので、右書類を自宅に持帰つておいたところ、同月二十五日頃被告徳平の留守中に、訴外明坂が原告の妻訴外原田千代美の指示を受け、前記書類及び本件建物の権利証、並びに被告等の印鑑、印鑑証明を被告徳平の妻ステから受け取りこれ等を訴外原田千代美に渡したので、原告はこれ等を冒用して、本件建物及び土地の売渡証を偽造し、所有権移転登記の手続をなしたものである。

以上述べたとおり、被告徳平は原告主張のように本件建物及び土地の所有権を原告に譲渡したことはなく、又原告が本件建物及び土地の明渡を求める通告を被告等に対してなした場合被告等が直ちにその明渡をなすとの特約をなした事実もなく原告から原告主張の如き通告を受けた事実もないので原告の本訴請求は失当であると述べた。

(立証省略)

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